株式会社
ハイバーテック |
関心高まる汎用モーション・コントロール・ボード |
ソフト資産を継承しながら様々な形態のコンピュータに対応できる柔軟性にも注目 |
汎用モーション・コントロール・ボードに対するシステム開発者の関心が高まっている。汎用ボードを活用することで,モーション・コントロール・システムの開発に要する負担を軽減し,組み込みシステムの開発効率を向上できるからだ。しかも,最近ではソフトウエア開発を支援するツールやサービスも整ってきたことから,汎用モーション・コントロール・ボードが,ますます使いやすくなってきた。そこで約20年前からモーション・コントロール技術を追求し,ハードウエアおよびソフトウエアの開発,製造,販売,受託開発などを手掛けているハイバーテックに,同社が得意とする汎用モーション・コントロール・ボードの特長などを聞いた。 コンピュータを使ってモーターの動きを制御し,様々な動きを実現するモーション・コントロール技術は,産業用機器をはじめ「動き」を必要とする多くのシステムで使われている(図1)。こうしたシステムに数多く使われている汎用モーション・コントロール・ボードとは,PCI,ISA,USB,PC/104,CPCI(コンパクトPCI)などの標準バスを備えたモーター制御用ボードである。標準バスを介して制御用コンピュータ・システムと接続して使う。システム制御用プログラムが組み込まれたコンピュータ・システムから送られてくる制御情報に応じて,モーター駆動用の信号を出力するのが,主なモーション・コントロール・ボードの役割だ。 様々な組み込み形態に対応
標準化された規格に基づいて設計された汎用のモーション・コントロール・ボードを利用することによって,システム設計者が得られる大きな利点の一つは,設計者の負担を軽減し,設計者の労力を重点課題に振り向けることができることだ。「産業用機器を中心に市場ではユーザー・ニーズが多様化していることからシステム設計者にかかる開発負荷が増えています。特に最近の製造装置では高度な画像処理が使われているので,このためのソフトウエア開発工数が増えているようです。システム全体の中では一部に過ぎないモーション・コントロール・システムを,汎用品を使って手早く設計することで,システム本来の価値を生み出すための開発に設計者が集中できるようになります。システム・メーカーは,顧客の要望に応じた開発を一層強化できるでしょう」(ハイバーテック営業技術部課長の伊東健氏)。 最近ではバスの種類やボードの形状など豊富な種類の汎用モーション・コントロール・ボードが市場に出ている。設計者は,開発を手がけるシステムの構成や規模などに適した汎用ボードを容易に選べる。例えばPCIバスに対応したボードならば,デスクトップ・パソコンのスロットに挿入して使える(図2(a))。PC/104やPC/104Dといった筐体への内蔵を前提にした規格のボードを利用すれば,モーター・ドライバやコントローラなどを一体にした小型のモーション・コントロール・ユニットを実現できる(図3)。 汎用モーション・コントロール・ボードがもたらすもう一つの大きな利点は,過去のソフトウエア開発資産や開発環境を継承しながら,効率よく様々な組み込み形態の製品を展開できることだ。例えば,PCIボードならば,パソコンに挿入して使うだけでなく,コンピュータ内蔵の組み込み用ラックに搭載することも可能だ(図2(b))。このとき同じ制御ソフトウエアを両方のシステムに組み込める。あるいは,過去に作ったソフトウエアのソース・コードを利用して新システムのソフトウエアを短期間で開発できる。このときツールなどの開発環境も,従来のまま利用できる。 高性能・高機能が実現できる汎用ボード実は実際の組み込みシステムのモーション・コントロールには,シーケンサなど既成の制御装置を利用して構築したシステムや, システム・メーカーが独自に開発したモーション・コントロール・ボードを使ったシステムが利用されていることが少なくない。シーケンサ,独自開発の専用ボード,汎用ボードを使った場合に,それぞれ利害得失があるからだ。 シーケンサは,プログラミングが簡単なので,技術者がプログラムを習得しやすい。設置した現場でプログラムを手直しすることも容易にできる。単一メーカーの製品で構成すれば動作が保証されている。こうした長所がある一方で,複数のモーターを高速で同期させるのが苦手。制御する軸数が増えるにつれて,チャネル間の制御タイミングにズレが生じるといった短所がある。 専用ボードの場合は,開発するシステムに合わせて無駄がないハードウエアを実現できる。独自のノウハウを装置に生かせるうえに,そのノウハウが社外に流出しない,といった長所もある。ただし,システムの仕様変更が生じた場合に,改めて設計しなおさなければならないことが多い。ボードの品質管理や維持に多大な工数が必要になるなどの問題もある。 汎用ボードの場合は,冒頭に述べたように設計の効率化に役立つほか,シーケンサに比べて複雑な動作や高速制御を実現しやすいといった長所を備える。「この一方で,汎用ボードを使うにはコンピュータやプログラミングの専門知識がある程度必要なことが,汎用ボードの『敷居』を高くしていると言われてきました」(伊東氏)。 ソフトウエア開発を支援このように言われてきた汎用モーション・コントロール・ボードの「敷居」は,ソフトウエア開発を支援する製品やサービスが登場してきたことで下がってきた。例えば,ハイバーテックのボード製品の場合,動作確認および接続確認用の実行プログラム「動かしてみる」が添付されている。ボード用のドライバソフトをインストールすれば,同プログラムを実行して,パソコンの画面上で基本動作を確認できる。これを利用して,プログラミングを短期間で学べる。さらに基本的な動作を実際のシステムで実行するためのサンプル・プログラムも添付されている。「このサンプル・プログラムを利用してボードの基本動作を確認できるだけでなく,サンプル・プログラムを再編集することで,効率よくプログラミングすることもできます」(伊藤氏)。 ハイバーテックの製品については,コンピュータと接続するために欠かせないドライバ・ソフトも充実しつつある。同社は,提供している汎用モーション・コントロール・ボードにWindowsXP/2000/NT/98に対応のドライバを標準で添付している。DOSへの対応も可能だという。さらに,システム開発などを手掛けるフォークスがQNX用ドライバを開発するなど,ハイバーテック社製のモーション・コントロール・ボードに対応したリアルタイムOS用ドライバを開発する提携企業の動きも進んでいる。 利用しやすい環境が整ってきたことから,汎用モーション・コントロール・ボードを新たに採用するユーザーが増える機運が高まってきた。この機に合わせてハイバーテックは,2005年 6月29日(水)〜7月1日(金)に東京ビッグサイト(東京都港区)で開催される第8回 組込みシステム開発技術展の会場内で開かれるセミナーで,汎用モーション・コントロール・ボードをテーマにした講演を行う。組み込みシステムの設計者にとって,汎用モーション・コントロールの最新の動向や技術などを詳しく知る絶好の機会といえよう。
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